休職規定(対象者の範囲と休職期間、実務対応)

2016(平成28)年12月4日初稿

第○条 従業員が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間を上限とした休職を命じることができる。ただし、試用期間中の者(その他、契約社員・パートタイマーなど)については、これを適用しない。
 (1) 業務外の事由による欠勤が、業務に支障をきたす程度に続く(断続的な場合を含む。)と認められるとき
  ア 勤続○年以上の従業員…○年
  イ 勤続○年以上の従業員…6か月
  ウ 勤続○年未満の従業員…3か月
  エ 勤続6か月未満の従業員…1か月
  (2) 精神又は身体の不調等により労務提供が不完全と認められるとき・・・前号の期間に同じ
 (3) 前2号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき・・・必要な期間
 2 前項各号の休職期間は、原則として会社が休職を発令する日を起算日とし、連続又は近接する休職期間は通算するものとする。この場合において、発令の日以前の、同一又は類似の事由による連続又は近接した欠勤日については、休職期間に算入することができる。
 3 前項の休職の発令に当たっては、会社は、第1項各号の休職の事由又は程度を勘案し、その裁量により休職を認めず、又はその期間を短縮若しくは延長することができる。

(休職事由証明書の提出義務、再休職時の残存期間の適用、休職期間中の社会保険料等の納付義務、休職期間中の無給、休職期間の満了による退職等に関する規定は省略)

 

 試用期間中の者に休職を認めるべきか?

 休職制度は一般的に、業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及ぶとき、労働契約関係そのものは維持させながら、労務への従事を免除するものと定義されます。

 この休職制度は、労働基準法等でその設置が義務付けられるものではなく、労使双方に解雇の猶予を可能とする恩恵的な制度と解されることから、専門家の多くも、おそらくは “入社間もない従業員に恩恵的な制度を適用する必要はない” という(制度の)あるべき論によって、試用期間中の者などの適用除外を推奨していたりしますが、本当にそれでよいでしょうか?

 私は、相談員としての経験や労働市場の実態から、“試用期間中の者や勤務年数の浅い者こそ、休職制度の対象としておく必要がある” との意を強くしましたが、それは以下のような理由によります。

 

 解雇予告手当/傷病手当金ハンターの手口

 残念ながら労働市場には、外見や立ち居振る舞いからは見分けのつかない、そして労働法令等もよく知っている “解雇予告手当/傷病手当金ハンター” と呼ぶべきような人が、(ごく限られた少数ながら)巡回しています。

(見分けのつかないのは、ある意味、当然でもあります。(この人たちは)会社に潜り込めないと商売にならないからです。中には難易度の高い業務上のスキルや資格を持った人さえいるのです。)

 こういう人のよく使う手口に、「入社直後~1か月程度の試用期間中に、連続した欠勤の申し出を行う(メンタル系の診断書が添えられる場合があります)」形から始まるものがあります。

 このような申し出に対し、多くの事業主さんが “仕方なく欠勤を認める” という対応を取られますが、もうその時点で半分は術中にハマっていると言えます。

 入社後の間もない時期に連続欠勤を申し出てくること自体、業務とは因果関係の無い場合がほとんどでしょうし、その者が善意か悪意かを立証することは困難なものの、確信犯である割合は少なくはないものと推測されます。

 

 『そんなことなら、ちゃんと働ける状態になってから応募して来いよ!!』と言いたいところですが、確信犯の場合は、最初からまともに働くつもりは無いのです。

 さらに確信犯は、例えば労働基準法第21条第4号では「試用期間中の者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」は、第20条の解雇予告の適用があるとしていますが、こういった基準法の規定、監督署への申告制度、(健康保険の)傷病手当金制度などを熟知している場合が少なくないのです。

 

 対応策としての休業規定と実務対応

 このような事例においては、欠勤の申し出(診断書の提出)が繰り返されたりします(注)が、この場合にもし、試用期間中の者への休職規定の適用が無ければどうなるでしょうか?

 残念ながら、解雇予告手当の支払いを伴う解雇しか手段がないとお考えください。

 それは確信犯の場合、元々が解雇予告手当や傷病手当金狙いだったりしますので、容易には合意退職に応じてもらえないからです。
(ただしこれは、退職後の傷病手当金が受給できるかどうかといった事情に左右されることはあるかもです。また、いくらかの解決金等を積むことで合意してくれる可能性もあります。)

注 解雇予告手当狙いの場合は、①1~2日働いた時点で意味不明な欠勤が始まり、14日を過ぎた当たりで突然「明日から出勤できます」等と言ってくるパターンや、②14日を過ぎた当たりに向けて、徐々に不適切な行動を加速させる(例:仕事に不向きな身なりに変貌する、会社から注意指導されるような行動を取り出す)等のパターンもあります。事業主さんから「もう来なくていいよ」等と言われるのを待って「これは解雇だ!!」等と言い出すのです。

 

 一方で、見本のような休職規定を整備しておけば、欠勤が申し出(診断書が提出)される度、機械的に休職を発令し、延べで3か月なら3か月となる時期を持って「休職期間満了による退職」という処理を淡々と行うことができます。

(この場合、その間の社会保険料の会社負担分の支払いは、やむを得ないものとお考えください。ただし解雇可能な場合は、社会保険料と解雇予告(手当)のどちらの負担が有利かを比較検討する余地はあります。
 また、就業規則に規定のある場合であれば、承認できない欠勤(≒無断欠勤)が一定期間継続したとして、自動退職とする処理が可能な場合もあるでしょう。)

 さらには、「これは解雇だ!!」「解雇予告手当が支払われません!!」といった議論のすり替えを許さないためにも、休職期間満了の30日前までを目安に「休職期間満了通知書」を発行し、休職期間満了日と、その日の到来により自動退職となることを通知(予告)することもお勧めします。

 

 以上、不心得者対応策としての実務対応を述べましたが、手術やそれに伴う入院・療養の期間が明確な従業員さんや、功労度の高い従業員さんなど、通常の従業員さんの場合の対応は、全く別の話しです。

 見本規定では、“会社の裁量で延長できる” 旨の規定を設けましたが、それこそ休職制度は会社の恩恵的な制度な訳ですから、その状況に応じて “全体的には長過ぎない程度に設定しつつも、裁量による個別判断で延長を適用” するのが、運用しやすいと思います。

 その他、当該従業員が契約社員やパートタイマーの場合のついても、解雇予告規定の適用時期や、社会保険加入の有無等に違いはありますが、概ね上記をご参考いただければと思います。

 

 就業規則の存在意義

 上記のような事例に遭遇した場合に、「腹は立つけど(解雇にして)1か月分をサッと支払って終わらせる」という事業主さんもあるやも知れません。

 その1か月分はドブに捨てたに等しいものですが、それはそれで終わる可能性は高いです。

 確信犯は、最初から解雇(1か月分)狙いな場合も多いですから、1か月分もらえれば満足であって、出るところに出て不当解雇を争うようなことまでは考えていないと思われるからです。

 これは、盗人が盗難被害に会ったからと言って、(ボロが出るのを怖れて)警察に訴えられないのと同じようなものでしょう。

 

 ですが、行政からの助成金や補助金を活用する事業主さんなど “解雇を発生させられない事業主さん” であって、試用期間中の者や勤務年数の浅い者を休職制度の対象としていない場合は、(総務・人事の)担当者さんともども、非常に頭を悩ませることになります。

 「会社は私を解雇にはできませんよねぇ…と言われました」という担当者さんの声もお聞きしたことがあります・・・不心得者のうちには、解雇が助成金や補助金の不支給事由となることまで知っている者がいるのです。

 『療養が必要なのはこっちの方だよ (T_T)』と思われるくらい、悩まれることと思います。

 

 就業規則作成業務のPRなどでは、よく「会社を守る就業規則」といった言葉が使われますが、私は少し違う感覚を持っています。

 就業規則は「会社を守る」だけではなく「会社及び真面目に働く従業員さんを、不心得者から守る」ものなのです。

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